研究概要 |
1.ヤツメウナギの体表粘液および卵巣中にタンパク毒を発見した。体表粘液および卵巣1gでそれぞれ体重20gのマウスを70匹、215-800匹殺し得ると見積られた。両毒は赤血球凝集活性、溶血活性を示さず、また卵巣毒には抗菌活性も認められなかった。2.体表粘液毒はきわめて不安定で精製には至らなかったが、50%グリセリンによる安定化効果が見いだされたので、今後の精製ならびに性状解明が期待される。3.卵巣毒はCM-celluloseクロマト、ヒドロキシアパタイトクロマトおよびFPLC(Mono S)により、natiive-PAGEで単一バンドを与える精製毒を得た。精製毒の毒性は強く、マウス静脈投与によるLD_<50>は33μg/kgと求められた。毒は低温貯蔵、pH変化に対して安定であるが加熱には不安定な塩基性タンパク質で、分子量は還元剤非存在下のSDS-PAGEにより40,000と測定された。還元剤存在下のSDS-PAGE分析により、毒はS-S結合を介した分子量30,000と10,000の2種類のサブユニットで構成されていることが判明した。アミノ酸組成では含硫アミノ酸の乏しいことが特徴であった。サブユニットの分離を達成できなかったためアミノ酸配列に関する知見は得られなかったが、今後に残された重要課題である。4.体表粘液毒は調べた54種魚類中9種に検出された。特に3種ウナギ目魚類(ウナギ、ヨーロッパウナギ、ハモ)の毒性が高かったが、クロマト挙動などから毒の性状はお互いに類似しており、いずれも分子量約400,000の酸性タンパク質と判断された。スフィンゴシンおよびガングリオシドにより毒性が阻害されることが注目された。5.卵巣毒は20種魚類について検索したが、すべて陰性であった。
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