研究概要 |
海洋性Pseudomonas HA-318は、フコサミンを構成糖に含む酸性多糖を菌体外に生産した。本菌は、多くの性質がP.alcaligenesに類似するが、いくつかの重要な点でこれと相違していることが認められた。本菌を海水培地で培養し菌体を除去後、エタノールおよびCetavlon沈殿、次いでDEAE-celluloseクロマトグラフィーで精製すると超遠心および電気泳動分析で均一な標品が得られた。ガラクトース、ガラクトロン酸、ピルビン酸およびN-アセチル基の他にマススペクトル分析等によりフコサミンを含むことが特徴として認められた。本多糖のH-1 NMRスペクトル(500MHz)では、δ=5.33,5.29,5.18,4.82,4.72ppmにアノメリックプロトンのシグナルが得られ、本多糖は、5糖残基の繰り返し構造と推定された。また、δ=2.05にアミノ糖のN-アセチル基、δ=1.45にアセタール結合のピルビン酸に基づくシグナル、δ=1.23には、フコサミンの6-O-メチル基が示された。ピルビン酸のシグナルは、脱ピルビン酸処理により消えたことより確認された。一方、C-13NMRスペクトルから、δ=25.3にN-アセチルアミノ糖、δ=27.8にピルビン酸、δ=19.0に6-O-メチル基を示すシグナルがそれぞれ認められた。この多糖をホルムアミドとクロロスルホン酸により硫酸化して得た硫酸化多糖は、DEAE-celluloseクロマトグラフィーにより分画・精製して得たS含量の低い画分(S=6.4%)に高い抗HSV-1(Vero cell)活性が見られ50%細胞障害阻止濃度は0.72μg/mlでその選択毒性指数は約1,400を示した。抗ウイルス性硫酸多糖は通常高い硫酸含量(S>10%)を示すが、この試料は、低い硫酸含量(S=5.6%)で抗HIV-1(MT-4 cell)活性を示し(50%細胞障害阻止濃度は0.69μg/ml)、デキストラン硫酸(DS5000の)の1.5μg/mlより高い活性を示し構造と活性とに関連性のあることが認められた。
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