研究概要 |
本研究は、沿岸海水から硅藻細胞を殺藻または溶藻する海洋性の微生物を分離し、その殺藻機構を解明することを目的とするものである。本研究で得られた成果の概要は以下の通りである。 1.鹿児島湾沿岸およびクルマエビ養殖場海水から、硅藻重層寒天平板上で拡張型プラークを形成する4種類の殺藻性微生物としてAmoebe,Labyrinthula,Saprospira,Vitreoscillaを分離した。 2.Saprospira属分離菌株は、細胞形態、生理学的性状、増殖挙動などから3菌種に分類され、菌体脂肪酸組成においても特徴があり識別が可能であった。 3.Saprospira属細菌は藻類重層寒天平板ではプラークを形成したが、培地中に添加するアミノ酸または有機酸の種類によってプラーク形成、コロニー形成、細菌非増殖の3つの場合に分けられた。 4.Saprospira属細菌は、宿主としてChaetoceros以外の硅藻類(Skeletonema)に対しても顕著な殺藻活性を示した。 5.藻類液体培養液に菌体懸濁液を添加した場は、急激な濁度の低下が見られたが細菌単独培養上清液では、菌株によって藻類増殖を阻害するものと阻害しないものがあり、細菌藻類混合培養上清液では全く藻類増殖阻害が見られなかった。 以上の結果から、Saprospira属細菌の殺藻活性は、細菌細胞が硅藻細胞と直接接触した時に初めて作用する菌体表層上の高分子物質が関与するものと推察される。
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