研究概要 |
本課題による第2年度の研究成果を要約すると,以下のようである。 1.国際市場価格競争下における経営体活動条件の整備 (1)自由市場経済においては,農業といえども経営規模の拡大や縮小が,弾力的にできる自由性の高い農業経済構造にする必要がある。そのため基本的生産要素である農地の所有と利用の分離や,農家の農地所有拡大を促進する農地所有権移動の自由化が必須の課題となる。これらは何れも規制の緩和を必要とするもので,現行農地法の大幅な改正が要請されることを指摘した。 (2)この農地のほか農業の季節性を排除するような技術や経営システムを開発し,農業労働の年平均的周年就業構造を確立する。これらの条件を整備し,個別経営体が規模拡大し易くすれば,資本経営意識の向上につれて企業性が高まり,生業性は払拭されて,市場競争適応の発展性を具えた企業的農業経営体形成が醸成されることを明らかにした。 2.作目別低コスト生産システムをもつ複合経営の生成と育成 個別経営体の規模拡大が可能であることを前提として,市場価格競争力のある経営体とするには,低コスト生産システムをもつ作目が,経営全組織の中に合理的に組み込まれる必要がある。その経営合理性の指標として,(1)家族労働力の周年就業,(2)作目結合と収益性確保,(3)経営の長期安定成長性の確保,(4)生物生態系保持と経済性の均衡,(5)複合経営システムを支える新技術の開発,(6)労働力や農地の需給調整機関の設置と活性化などがあげられる。これらの指標達成とともに,近代的複合経営体を成立させ育成することが課題となる。本研究ではそうした複合経営体の成立の可能性を検討すべく,稲作経営と肉用牛経営をとり上げ,その分析と考察を加えた。これにより国際市場競争下における農業発展に,大きな展望を与えることができたと考える。
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