研究概要 |
1980年以降,農業年雇及び農業臨時雇300人目以上雇用農家が増加していたが,90年センサスでも,その傾向の持続・強化が確認された。雇用労働の動向は,農業分野における階層構成把握の観点からは一つの重要論点だったが,日本ではこれまで減少傾向が支配的であり、量的にも少かったので特段に注目されることはなかった。その雇用労働が増加傾向を見せ,しかも増加の勢いが強まっていることは,農業における新局面形成として注目されるのであり,その内容解明を本研究は課題とした。 統計的分析の結果は,この雇用労働増が従来とはちがう地域でおきていること,即ちかっては稲作大経営地域で農業雇用が多かったのだが,今日は施設園芸等高度商品生産展開地域で雇用が増大していることを明らかにした。従来なかった新局面である。 統計的分析が明らかにしたもう一つの注目点は,農業雇用経営の一経営体当り雇用量が家族労動力をはるかに上廻ることである。臨時雇300人日以上雇用は年間2人以上の常用労働者雇用に相当するし,農業年雇雇用農家1戸当り雇用人数は2.35人になっている。雇用経営平均でのこの数値は,雇用農家のなかには家族労働力をはるかに上廻る雇用者をかかえる経営,つまり富農さらには資本制経営があることを意味する。 実態調査の結果も,農業雇労働者の性格が明らかにかってとは異なっていること,そして雇用経営のなかには,センサス上は農家として把握されていても本質的に資本制経営とすべき経営が存在することを明らかにした。近年,農業経営の法人化を農制当局は強調しているが,その政策的意図は法人化に家族経営の近代化を期待するにとどまっている。資本制経営形成の実体を踏まえて,その展開をスムースにする施策にこそ構造政策の力点は豊かれるべきである。
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