| 研究概要 |
本研究の目的は,土地利用の改変に伴う長期流出の変化を,タンクモデルの,特に最上段タンクの上部流出孔係数の経年変化として現し得るような,4段貯留型タンクモデルの係数索定方法を作成する。そして,係数の経年的変化と土地利用の推移との関係を照合することにより,長期流出の変化の評価方法としての有効性を検証することにある。この係数索定方法の一つは,まず,各年毎の個々の降雨-流量資料からモデル係数を索定する。索定値は同じ係数でも年毎に異なる。そこで,この索定値群から初期水深以外の係数1個ずつの流域値を順次に決定して行く。長期流出の変化を,上部流出孔の孔係数の変化で評価するときには孔係数を,また,孔高の変化で評価するときには孔高を残して,他のすべての孔係数の流域値を得るまで,この決定作業を繰り返すという方法である。もう一つの方法は,各年が不連続である降雨-流量資料を一まとめにしたデータから,上部流出孔の孔係数の変化で評価するときには孔係数と初期水深以外の,また,孔高の変化で評価するときには孔高と初期水深以外の係数の流域値を一括索定する方法である。この二つの係数索定方法で評価した流域は,金沢市近郊の金腐川上流域で,1975,6年から道路改修や区画整理事業を契機に,急激に都市化が伸展した所である。解析期間は1971〜91年の21年間で,1971〜1975,6年の間を農林的土地利用,1975,6年以降を都市的土地利用の伸展期間と見なし,土地利用の推移と係数変化とを照合することで,評価方法を検証した。係数索定では,初期値が異なると,索定値も異なる。6組の初期値群を作り,測定の繰り返しという観点で,群毎に経年変化を求めた。いずれの初期値群の孔係数,孔高の場合も,1976年頃を境にする,土地利用の変化と対応した経年変化を示しており,本研究の方法は長期流出の変化を評価する方法として,きわめて有効であるという結果を得た。
|
