研究概要 |
本研究期間である平成4〜5年度(2年間)において、以下のような免疫化学的に興味の持たれる諸点が明らかにされた。 1.ウシ初乳をSephadex(グルコースポリマー)ゲルを用いたアフィニテークロマトグラフィーに供し、ゲルに特異的に吸着する成分の存在を初めて明らかにし、本成分の単離精製を行った。 2.SDS-PAGE,HPLCおよびアミノ酸組成などの化学分析、また免疫電気泳動、二重拡散法などの免疫化学分析により、このSphadex特異的吸着成分は、ウシ免疫グロブリンのG1であることを、明らかにした。(以下SB-IgG_1と略記) 3.SB-IgG_1は、マウスひ臓リンパ球に対して強い幼若化活性を示し、とくにB細胞を刺激すること(Bセルマイトジェン)およびこの活性が分子全体の高次構造を破壊すると失われることを明らかにした。 4.Sephadexに強く結合したSB-IgG_1の糖質認識性を検討し、とくにα-D-グルコース部分に対して強い結合能を有し、この性質が分子のF_<ab>領域に由来することを明らかにした。したがって、SB-IgG_1は「グルコース特異的レクチン」様活性を有することを示した。 5.SB-IgG_1のマウスリンパ球上でのレセプター構造を解明するための検討として、ビオチン標識したSB-IgG_1を用いてレクチン様染色を試みた。その結果、SDS-PAGE・電気転写後のPVDF膜上で、α-D-グルコース含有N-型糖鎖を結合するニワトリ免疫グロブリンG(IgY)を特異的に染色できた。また、ラット腎臓組織切片の染色では、α-D-グルコース含有O-型2糖鎖を有するコラーゲンのI,IIIおよびIV型のみを特異的に染色できた。 以上より、ウシ初乳に含まれる免疫グロブリンGの一部には(約0.4%)、免疫系を刺激する分子の存在することが初めて明らかにされた。
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