研究概要 |
主要栄養素のいずれに対しても同化作用を有するインスリンは栄養素の利用(酸化)と蓄積割合を調節している重要なホルモンの一つである.本研究は種々の栄養生理条件下にある反芻家畜の栄養素の利用(酸化)と蓄積量の割合を明らかにすると共に、この割合を調節する一因子であるインスリンの関与を検討することを目的とした. 1.低マグネシウム血症めん羊の栄養素の利用(酸化)およびこの利用性に対するインスリンの関与を明らかにするため、 (1)正常飼料または低Mg/高K飼料を摂取しためん羊にグルコースクランプ法(EGC法;8mU/KgBW/min)と呼吸試験を同時に実施し、炭水化物、脂肪および蛋白質の酸化量を求めた.低Mg血症めん羊における脂肪の酸化割合は有意に増加した.この酸化割合の変動にインスリン作用の低下が関与すると推察された. (2)正常めん羊と低Mgめん羊を常温(20C)および寒令(0C)環境下で飼育し、(1)と同様にグルコースクランプ法(EGC法;1,2,4および8mU/KgBW/min)と同時に呼吸試験を実施し、各栄養素の酸化量とインスリン作用(感受性)を比較検討した.寒冷環境下において低Mg血症めん羊のインスリン作用は正常めん羊のそれより有意に低下した.いずれのめん羊でも、寒冷環境下の熱生産量および脂肪の酸化割合は、常温時のそれより有意に増加したが、インスリン注入水準による差異は認められなかった. 2.クレンブテロール(β-adrenergic agonist)投与めん羊における栄養素の利用分配とその調節に対するインスリンの関与を明らかにするため、 (1)めん羊にクレンブテロール(0,10および40ug/KgBW/d)を7日間投与した後、呼吸試験を実施して三大栄養素の酸化割合を求めた.クレンブテロール投与は血中FFA濃度を増加し、熱生産量および脂肪の酸化割合を有意に増加させた.このことから、クレンブテロールは体脂肪の分解および脂肪の利用(酸化)を促進し、熱生産量を増加させることが示された.
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