研究概要 |
カルシトニン(CT)は哺乳類では甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞),鳥類以下の脊椎動物では鰓後体が合成,分泌するペプチドで,腸管からのカルシウム(Ca)の吸収の抑制,骨組織からのCaの溶出の抑制などによって血中Ca濃度を低下させる作用を有し,臨床的にはCa代謝病との関係において注目されている。一方,甲状腺,上皮小体,鰓後体はいずれも発生初期に出現する鰓曩から派生した内分泌器官であり,新陳代謝,成長・発育,Ca代謝などに関係している。そこで本研究では,まず発生過程におけるCT産生細胞の動態を,アフリカツメガエルの鰓後体を材料として,甲状腺,上皮小体の発達との関連において免疫組織化学的ならびに形態計測学的に検索し,以下のことを明らかにした。1.CT産生細胞はステージ47/48で出現し,その数はステージ59まで増加するがその後は変態を完了するステージ66まで減少する。2.鰓後体はステージ45で出現し,その体積はステージ61で最大となるが,以後減少する。3.上皮小体はステージ43で出現し,その体積は変態完了まで増加を続ける。4.甲状腺はステージ43で出現し,その体積はステージ61で最大となるが,以後減少する。またCTのin situ hybridizationでは,50塩基のオリゴヌクレオチドをDNA合成機で合成し,これを探子として成体のラットの甲状腺で非放射性in situ hybridizationによる検索を行ない,甲状腺C細胞にCTのmRNAの発現があることを確認した。しかし,非放射性in situ hybridizationの技法はまだ一般的に確立したものではなく,本研究ではその条件の検討に多大の労力を費したため,この技法そのものは確立できたが、CTおよびCT遺伝子関連ペプチドmRNAの発生過程における発現に対する非放射性in situ hybridizationによる解析については,本研究年度において最終的な結果を出すことはできなかった。
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