研究概要 |
ヒト,サル,ウシ,ブタ,イヌ,ネコ,ウサギ,モルモット,ラット,マウスの膵臓の血管鋳型を作製,これを微解剖して走査電子顕微鏡で観察した。マウスとラットでは,多くの膵島は小葉間とくに導管に沿って存在し(小葉間膵島),その輸出血管は靜脈に直接注ぐ。これらの動物の小葉内膵島は靜脈性導出路をもつほかに膵島・腺房門脈系をもって小葉内毛細血管叢に注ぐ。モルモットでも多くの膵島は小葉間膵島に属して小葉間靜脈に注ぐ一方、小葉内膵島はもっぱら膵島・腺房門脈を出す。ウサギ,ネコ,イヌ,ブタ,ウシには小葉間膵島はほとんどない。これらの動物では膵島は主として小葉内膵島であり,その輸出血管は全て膵島・腺房門脈として小葉内毛細血管叢に注ぐ。サルやヒトでも同様で,膵島のほとんどが小葉内膵島であり,もっぱら膵島・腺房門脈を脈出する。すなわち,ヒトやサルでは膵島から起って直接靜脈に注ぐ血管はない。小葉は動物が大きくなるにつれて大きくなる。一方膵島は動物の大きに関係なくほぼ一定の大きを保つ。従って,マウスやラットでは小葉のかなりの部分を膵島が占めることになり,これらの動物で認められる膵島・靜脈路は膵島・腺房門脈の一部が変形し膵島血管叢の側副導出路となっていると考えられる。すなわち,膵島・靜脈路は本来膵島・腺房門脈である。以上のことから肉食,草食,雑食各動物の膵の血管群には特記すべき有為の差はないといえる。モルモット等小動物で小葉間膵島が特異的に認められるのは外分秘部が未発達で各膵島を十分に包みこまれないためと考えられた。ラット膵をアルデヒド固定してパラフィン切片とし,これを鉄コロイド(pH1.0〜20)で染色すると膵島・腺房門脈と膵島・靜脈路に沿う分分秘細胞に強い反応がみられた。このことは膵島が何んらかのかたちで外分泌部をコントロールしていることを示す所見と考えられた。
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