研究概要 |
本研究はラットの造血巣は個体発生学的に卵黄嚢→胎仔肝→胎仔脾→骨髄へと移動する時,その造血巣が胎齢の早期,特に11日以前にはどこにその主場がみとめられるか,またその造血を支持する組織・細胞が何であるかを明らかにすることを目的とした.造血巣で造血が営まれる場合,一般的には造血細胞,造血支持細胞,造血刺激因子の3者が必要と言われている.申請者は既にラット胎仔肝に存在する幼若造血系細胞に対しUB-12という単クローン性抗体を作製し,同抗体を用いてラットの造血巣,造血細胞について報告してきた.一方,胎盤はヒト造血系細胞のCFU-C(in vitro)測定法を行うときの成長刺激因子として胎盤培養上清が使われるように,造血と密接な関係を持っていると思われ,胎盤と造血支持細胞,造血刺激因子との関わり合いの解析も行った. その結果,胎盤にもUB-12抗原が発現されていることが明らかになり,胎盤が造血に重要な役割を果たしていることが示唆されたが,胎盤組織のin vitroにおける長期培養,株化は困難を極め,未だ胎盤の細胞に対する単クローン性抗体の作成などには至っていない.一方,コラゲナーゼで肝組織から遊離肝細胞を作成し,部分肝切除したラットの脾臓,唾液腺,腎被膜下などに成獣ラット肝細胞を移植すると生着し,肝組織ができた(Cell Transplant,1994).移植肝組織における肝細胞は類洞面,毛細胆管面,接触面をそれぞれ認識するHAM2,HAM4,HAM8抗体(Anat Rec,1993)と反応し,3つの極性を持っていた.しかし,胎仔肝細胞を移植すると3種の抗体の認識する肝組織が形成されると同時に腺様構造も認められ,胎仔期と成獣期のラット肝細胞は分化度に差があり,前者がより未分化な細胞である可能性が示唆された.また,新たにラット胎仔肝細胞でマウスを免疫し,得られた単クローン性抗体(UB-18,UB-19など)の解析結果から,胎仔肝における造血支持細胞の可能性として肝細胞が相当するのではないかと言う結果も得られた.
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