研究概要 |
本プロジェクトでは平成4年から6年まで,免疫現象時の血管内皮と白血球との微細構造学的相互作用について研究を行ってきた。その結果を以下にまとめる。 同所性肝臓移植,リンパ節移植実験系で血管内皮細胞と白血球との相互作用において,これらの細胞間に特殊な超微構造が出現した。この現象に関与する血管内皮にはゴルヂ装置がよく発達し,糖蛋白が相互作用に重要な働きをしていることが推測された。これらの糖蛋白即ち細胞接着分子を免疫組織学的にかつ三次元的に検出するための新しい方法を開発した。この方法は固定する前に臓器保存液(UW液)・の中であらかじめ免疫反応を行わせることに特徴がある。反応後は通常の処理ができるために,同じ動物から透過,走査電子顕微鏡の試料が同時に得られ比較が可能で,微細構造もよく保存され,詳細な微細構造学的検討にも耐えた。この方法を用い,細胞接着分子ICAM-1の三次元的な微細局在をリン節の血管内皮に関し詳細に検討した。ICAM-1は高内皮小静脈に多く発現し他の血管の5〜30倍であった。またこの接着分子は血管内皮の隆起や突起に選択的にみられた。隆起と隆起の間には溝が形成されるがそこにリンパ球の細胞突起がしばしば落ちこんでいた。このことはICAM-1の発現している微細構造がリンパ球を捕えるために重要な働きをしていることを示唆している。 この研究の最終的な綾論は次の通りである。細胞と細胞の相互作用は接着分子と接着分子の反応で行われるが,それを効果的に行うために細胞は膜表面を過塑性に変化させ特殊な微細構造を形成する。従って細胞の相互作用のダイナミズムを理解するためには接着分子の発現の有無を知るだけでなく,その微細局在と膜表面の微細構造との関係を明らかにして初めて可能なのである。
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