研究概要 |
胎生期造血の変遷に関連し,マクロファージの関与とオリジン,機能的分化を明らかにする目的で,マウス胎児ならびに胎児と新生児の肝臓・脾臓・骨髄をHPMA水溶性樹脂切片による光顕・電顕観察ならびにエポン切片で電顕観察をおこなった.胸腺マクロファージの発生と関連させてまとめた結果の概要は次のとおりである. 1)肝臓造血発生以前にマウス胎児内にスカベンジャー機能を有する単核食細胞が血管腔内,体腔内に出現する.胎生9日から10日に出現するこれらの食細胞は,卵黄嚢造血と関連し共通の起源を持つと考えられる.細胞の移動像からその候補として間葉細胞があげられ,成熟動物の単核食細胞系とは異なる細胞分化経路で発生する可能性が考えられる. 2)胎児血管腔・体腔内食細胞と共通の超微形態を持つ食細胞は,肝臓造血発生時にも肝臓類洞内に出現し,活発な食作用を呈する.食作用の対象は卵黄嚢由来の循環原始赤芽球である.このスカベンジャーマクロファージは類洞から肝細胞索内へと核分裂しつつ移動し,その周囲に赤芽球が密接する赤芽球島の形成に関与する. 3)胸腺マクロファージは肝臓造血の発生以後,胎生15日に胸腺脾髄境界領域にはじめて出現する.この時期には血管周囲腔に単球様単核細胞が多数認められる.胸腺マクロファージはその前駆細胞の候補として胸腺血管周囲腔の単球様単核細胞が考えられる. 4)脾臓造血の発生時には遊走性マクロファージにくわえて,肥満細胞も活発な食作用を赤芽球系を対象として発揮する.食細胞は脱核後の赤芽球核,変性赤芽球,赤血球,好中球を食作用の対象とする. 5)骨髄造血発生時の一次骨髄には遊走性マクロファージに加え,固定性細網細胞が食細胞として機能する.食作用の対象はアポトーシスに陥った好中球が主体である. 6)脾臓・胸腺ならびに骨髄の遊走マクロファージは肝臓に由来する単球系を前駆細胞とすると考えられるが,スカベンジャーマクロファージの由来に関し,肝臓における単球発生と関連して,間葉系由来食細胞とどの時点でリレーされるか,明らかにする必要がある.
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