研究概要 |
目的:本研究は脳室内に色素をパルス状に微量注入した際の過渡的な色素濃度変化を光ファイバーを経てフォトセンサーで連続測定することで、脳室内の髄液移動速度を測定することである。 方法:送光用、受光用の直径200μm程度、長さ1mの光ファイバー2本と色素注入用チューブ(fused sillica capillary,0.1mmI.D.,0.2mm0.D.)を束ね、外径0.8mm程度のプローブを自作した。送光用ファイバーは光源であるハロゲンランプ(01ympus,LGPS)に、受光用ファイバーはフォトセンサーアンプ(Hamamatsu,C2719)にそれぞれ接続した。予め内部を白色に、外部を黒色に着色したプラスチック製サンプルチューブにラット側脳室内の髄液量に匹適する10μ1の生理食塩水を取り、それをpush-pull pump(BAS,CMA100)を用いて0.5-50μ1/minの速度で潅流した。そして、生理食塩水で0.8%の濃度に調製したtrypan blue dyeを極微少量試薬押出装置(General Valve,Picospritzer II)を用いて、2msecondの時間内に20psiの圧力で80nlの量をパルス状に注入し、その後のチューブ内の色素濃度の変化をデータレコーダ(TEAC,180TS)に記録し、その後計算機に転送して、色素濃度の緩和の時定数と潅流速度の関係を求めた。 結果と考察:潅流速度0.5-50μ1/minの範囲で色素濃度緩和の時定数は潅流速度の対数と高い相関を示し(r=0.929,n=14)、ラットでの髄液産生速度(約2μ1/min)での測定精度は±0.2μ1/min程度であった。我々は既に脱水回復時には血液Na濃度の低下に伴って髄液Na濃度もゆっくりと回復することを報告したが、その際の血液脳室間での水の動きに関しては未知であった。そこで、本研究で開発した方法をラットに応用してこの点を明かにする予定である。
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