研究概要 |
1.加齢に伴うヒト心筋ミトコンドリアDNA(mtDNA)変異;若年者から高齢者までのヒト剖検心筋よりmtDNAを抽出し、ミクロ高速液体クロマトグラフィー/質量分析計(microHPLC/MS)システムにて8-hydroxy-deoxyguanosine(8-OH-dG)の定量を行った。同時に、kinetic PCR法にて遺伝子欠失を定量した。その結果、8-OH-dG量は加齢と共に指数関数的に増加し[log(8-OH-dG,%)=-3.79+0.0400x age,r=0.85,P<0.01]、97歳で1.5%に達した。7.4kilo base欠失をもつmtDNAの比率も増加を示し[log(deleted mtDNA,%)=-3.59+0.0444x age,r=0.83,P<0.01]、97歳で7.0%に達した。さらに、8-OH-dG量と欠失mtDNAの比率との間には強い相関が認められた(r=0.92)。 2.加齢に伴うミトコンドリア呼吸鎖活性の低下;ラットおよびイヌの実験より、加齢に伴う呼吸鎖活性低下は、臓器ごとに大きく異なることが明らかとなった。すなわち、横隔膜筋・大腰筋等の骨格筋は、比較的若年から低下を示すが、心筋はかなり高齢にならないと低下しない。一方、肝臓では全く低下を認めない。 3.ミトコンドリア病動物モデルにおけるmtDNA変異;ミンコンドリア病を引き起こすことが報告されたAIDS治療薬のAZT、あるいは、肉の加熱処理由来の発癌物質2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridineを投与し、ミンコンドリア病モデルを作成した。各臓器のミトコンドリア呼吸鎖活性測定、mtDNAを抽出しての8-OH-dGの定量、遺伝子欠失の検出を試みた。その結果、どちらのモデルにおいても、8-OH-dGと欠失の蓄積、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの活性低下が認められた。
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