研究概要 |
我々は,自己免疫マウスにおいて肝臓のdouble negative T cell の増加することが共通の現象であることを見いだし報告したきた。ヒト肝臓においてもdouble negative T cellが存在していわゆるautoimmune hepatitis以外のウイルス性肝炎においても自己免疫現象が関与している可能性があるものと推測してきた。ウイルス性肝炎ではspotty necrosisの部分にはウイルスが証明されるのに,門脈域周囲のpiecemeal necrosisの部位ではウイルスなど明らかな病原体は確認されていない。しかし,そこでは多数のTリンパ球が出現し肝細胞を破壊し肝炎の予後を決定している。前述の動物の結果と合わせpiecemeal necrosis部位には肝細胞に対する異常はT細胞の禁止クローンが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。そこで,ウイルス性肝炎の病巣において特定のTリンパ球が出現しているか否かを検討するために,肝臓の生検材料を用いてリンパ球のモノクローナリティを検討した。当初,生検材料からmRNAを抽出しVβ遺伝子の検索をする予定であったが,検体が小さく十分な量の検体が得られず,免疫組織化学的に検討した。αβTCRスクーリングパネルの各種モノクローナル抗体を用いて特定のリンパ球が関与しているかどうかを検討した。本抗体はFACS用の抗体でなかなか十分な結果を得ることはできなかったが,肝細胞障害部に出現しているリンパ球はかなりheterogenousなものであることが推定された。これらのリンパ球の大部分はαβ型を示し,γδ型は少数であった。免疫組織化学法による検索となってしまったが肝炎において関与しているリンパ球には今回は必ずしも明瞭な特異なグループを確認できなかった。今後も検討を継続してゆくつもりである。
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