研究概要 |
本年度の研究目的にそって早期肝細胞癌(肝癌)の進展様式ことに間貭浸潤について検討した. 123例の肝硬変あるいは肝線維症を基礎に発生した肝癌の剖検例を主体に再検討し,1〜2層の肝細胞索即ち正索状型を呈する間貭内癌浸潤,いわゆるStreak patternの出現頻度をしらべた,対照としてこれら症例の非癌部組織,5の激症型肝炎,3例の結節性再生性過形成を〓んだ.streak patternは癌細胞索が平行に束状に間貭内に配列する典型的なものをgradeIIIとし,以下gradeI,II群と3群に分け,腫瘍径,組織学的分化度との相関をしらべた. streak patternの出現頻度は123結節中19結節(15%)であった.そのうち13結節は径3.0Cm以下の小肝癌であった.また大型結節に出現する場合には,主として高分型既ち正索状型を呈する一部において認められた.このようにstreak patternは小型・高分化型癌結節により高い出現率を示すことが明らかにされた.またgradeII,IIIは対照群にはみられず,はっきりとしたstreak patternが存在した場合には,結節の細胞異型が顕著でなくとも悪性であることがつよく示唆された. 間貭内に含まれる癌細胞索の良・悪性の判定基準も大きな問題となる.これについては鍍銀染色を利用したreticulin frame(RF)の有無が決め手となる.いわゆるpiecemeal necrosisにおちいった肝細胞索は間貭内においても依然としてRFを有している.しかし癌細胞はしばしばRFを欠いている.ところが癌細胞が類洞構造を誘導すると更びRFに囲まれるようになる. 現在これら間貭内へ侵入した癌細胞の増殖能,間貭破壊にかかわる因子,新生血管の特性などにつきなお検討が続けられている.
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