本研究の目的は、病巣組織内に寄生している真菌細胞を生物学的観点から、成長・老化・死化の一連の過程の中でとらえ、寄生真菌細胞のagingあるいはviabilityの客観的判定法の確立を企画したものである。 多数の内臓真菌症例のヘマトキシリン・エキシン染色、PAS染色、Gram染色、Grocott染色標本の観察により、病理組織学的に認められる病巣内真菌細胞のサイズの大小不同性の顕著化、形状の変形や通常では認められない異常型の出現、さらに真菌細胞の組織球内への取りこまれと、崩壊消失、真菌細胞のヘマトキシリン好性の減弱・消失、Gram陽性々の低下と消失、PAS染色性の低下などは何れも真菌細胞の変性、老化・死化過程を示すものと判断された。 また、Congored、Blancophore、Rheoninなどによる蛍光染色標本の蛍光顕微鏡的観察により、病巣内に寄生している真菌細胞の2次蛍光は、viabilityの高いもので強く、viabilityの弱いものでは2次蛍光が弱いことを観察した。この成績は試験管内実験および動物実験による検討によって、妥当性が確められた。即ち、病巣組織内真菌細胞の2次蛍光の強さはviabilityの強さに平行する。 本研究は、臨床的に使用される抗真菌剤の有効性の判定のみならず、抗真菌剤の開発にも有用な情報を提供するものと期待される。
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