研究概要 |
現在愛知県がんセンターでは600例を越える悪性リンパ腫を集積している。今回、リンパ節のT領域に発生する腫瘍について解析した。末梢性T細胞性リンパ腫はupdated Kiel(Suchi)分類に基づいて分類した。節性T細胞腫瘍の中核をなす低悪性度群(AILD type,T-zone type,lymphoepithelioid type)の臨床病理学的、免疫学的所見およびT細胞抗原受容体遺伝子再構成結果とその相互の関連について報告(Cancer 1991;67:2565)するとともに、これら腫瘍における遺伝子再構成の有無が増殖細胞の量的比率により影響されることを明らかにした(Cancer 1992;69:2571)。また、新たに認識された腫瘍単位である未分化大細胞型についても多くがT細胞性であり特異な臨床病理学的特徴を有することを報告し、これらの研究を背景として末梢T細胞腫瘍全体の臨床病理学的.免疫学的特徴を総括した(Cancer 1993;72:1762,Acta Pathol Jpn 1993;43:396)。さらに、その過程でCD56(NCAM)陽性T細胞腫瘍が特異な細胞学的および臨床病理学的特性を有する全く別個の高悪性度腫瘍単位(CD56(NCAM)-positive angiocentric lymphoma)を形成し、third lineageともいうべきnatural killer(NK)細胞由来の腫瘍を含む可能性を指摘した(Cancer 1993;71:249)。T領域腫瘍の中で重要な位置を占めるが、極めて稀と考えられるT細胞領域組織球(樹状細胞)由来と考えられる腫瘍(interdigitating cell sarcoma)極めて稀な症例(Cancer 1988;61:562)についてもようやく4例を見い出すことが出来、それらのリンパ節病変における主な臨床病理学的.免疫組織学的特徴を報告した(Pathol Int 1994;in press)。今後継続して、これら腫瘍の癌関連遺伝子(p53,bcl-1,bcl-2,nm23等)を中心とした生物学的性状について検索すると共にB細胞腫瘍についても研究を展開する予定である。また、末梢血中における樹状細胞前駆細胞は単核球分画の1%以下と推定され、その生物学的性状の把握の為に効率的な細胞分離精製方法の確立を試みる予定である。
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