研究概要 |
1)潰瘍性大腸炎-大腸癌のモデルの作成:ラットを用い,1-hydroxyanthraquinone(HAQ)を1%濃度にて約460日間投与する実験を行った。この実験中,有効動物29匹中25匹に大腸腫瘍が発生した。これらは盲腸又は結腸の腺腫乃至腺癌であった。これら有効動物の全例に盲腸又は結腸(とくに上部)にびらん性変化,陰〓膿瘍,メラノーシス,再生上皮が出現した。このことはHAQが大腸に腫瘍と潰瘍性大腸炎類似の病変を同時に誘発することを示している。 2)HAQ投与動物大腸粘膜上皮における細胞増殖性の解析:HAQを1%にて飼料投与せるラットを4,8,12ヶ月時に経時的屠殺し,大腸粘膜上皮の厚上,陰〓構成細胞数,BrdUの標識,ODC活性を解析し,メラノーシス,陰〓膿瘍,びらんの出現も経時的に観察した。HAQの投与期間に比例して,粘膜の厚さ,陰〓細胞数,BrdU,ODC活性は上昇し,潰瘍性大腸炎類似病変の出現もHAQの投与期間に比例した。 3)1,8-Dihydroxyanthraquinone(danthron)のマウスにおける大腸発癌促進効果:Danthronのdimethylhydrazine(DMH)による大腸発癌における促進効果を検討した。大腸腫瘍はDMH単独群とDMHとdanthronの組み合わせ群の結腸にみられたが後者の群のものが前者の群のものより有意高く,danthronの投与により大腸粘膜のODC活性が上昇した。 4)MAM acetate及びHAQ誘発大腸癌におけるサイトカイン(TNF-α及びIL-lα)発現の意義:MAM acetateとHAQは大腸発癌において相乗効果を示し,大腸粘膜上皮のTNF-α及びIL-lαの測定結果は大腸発癌物質の暴露を受ける大腸粘膜上皮で,サイトカインの活性が上昇し,発癌相乗効果に関係し,慢性潰瘍性大腸炎の様な炎症状態におけるサイトカイン活性の上昇は細胞増殖による発癌背景を形成する事を示す。
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