研究概要 |
細胞障害には活性酸素の誘起する反応、特に脂質過酸化反応が重要な意味を持つ。脂質過酸化反応のうち、本研究では膜傷害という機能的な面をみるため、リポソームを用い、膜破壊モデルを作った。リポソームにはカーボキシフルオレセイン(CF)のようなラジカル反応開始剤とはならない蛍光物質を封入し、膜破壊の程度を検出可能とした。共役ジェン、チオバルビツール酸反応物質の同時定量もおこなった。 CF-リポソームの脂質組成は飽和脂肪酸(ジパルミトイルフォスファチジルコリン),不飽和脂肪酸(大豆ファオスファチジルコリン)、不飽和脂肪酸とビタミンEをミックスしたものなどを用いた。脂質過酸化開始剤は、この教室で開発した鉄ニトリロ三酢酸と還元剤(システイン、グルタチオン,ビタミンC)を用いた。CF-リポソームと開始剤をインキュベートした。その結果(1)飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸とビタミンEを用いたリポソームでは脂質膜の破壊がみられなかった。また、鉄の還元剤の種類によっても膜破壊の程度が異なった。(2)鉄の酸化還元活性と、鉄と過酸化水素によるFenton様反応の何れが脂質過酸化に重要であるかを検討したところ、鉄の酸化還元活性がFenton様反応より重要である事が示された。過酸化水素の高濃度は脂質過酸化を阻害した。(3)鉄ニトリロ三酢酸と還元剤による脂質過酸化のpH依存性を検討した結果、脂質過酸化はpH5付近で最も強く、速く見られた。これは生体における炎症巣、虚血巣において意味のあることと思われる。 これまで脂質過酸化と膜傷害のモデルとして、赤血球、赤血球再構成膜が用いられているが、生体膜には脂質組成、ラジカル反応阻害剤など未知の因子が多く、ヘモグロビン自体は脂質過酸化開始剤となる可能性もあり、解析が困難である。この点CF-リポソームモデルにも有利な点が多い。
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