研究概要 |
増殖刺激下の標的細胞における変異原・癌原物質による染色体切断の増強作用について研究し結果は次の如く要約される。1増殖刺激と受けている標的細胞では変異原・癌原物質により染色体切断(CA)は増加する。CAの染色体間分布の時間的変動は化学構造の如何をとわず、一定の法則により支配されている。又、CAの染色体内分布も変異原・癌原物質の構造にかかわらず同一部位に分布し、染色体レベルの作用については一定の共通性を示した。増殖刺激及び抑制がある場合には染色体間分布はそれほど変動しないが、染色体内分布では切断部位の分布については切断部位のpeakは増殖刺激がある場合は、強調されるが増殖抑制があるとpeakの出現は明瞭でなかった。2.細胞増殖刺激があると、姉妹クロマチッド交換(SCE)も著明に上昇し、増殖抑制があるとSCE頻度は減少する。SCE部位の染色体内分布では同様に同一部位に集中し、CAの集中する部位に一致した。3.Gバンド上で特定してみると切断個所は、No1染色体では1q31,No.2染色体では2q21,2q25,2q41がCA及びSCEの好発するbreak pointであることがわかった。4.CAとSCEは増殖ないし抑制刺数により同様の変化をおこすことが明らかとなり、関連した現象である事が推察される。5.これらの現象は、増殖中の細胞で休止状態ではヒストンないし非ヒストン蛋白で防備されているDNAが無防備になっている可能性を示唆している。6.増殖刺激ないし増殖抑制をうけている細胞は、環境変異原物質により影響が受けやすいことがわかり、種々の対策が必要となる。今後の研究課題である。
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