研究概要 |
1.プラスミドpSV3-neoのトランスフェクションにより,数種の成熟マウス後根神経節由来シュワン細胞株を得た.いずれも蛍光抗体法によりS100,laminin,CNPase,Poが検出され,シュワン細胞の生化学的特徴を有していた.これら細胞株に対する制御因子として,dibutyryl cyclic AMP,forskolin,phorbor esters,platelet derived growth factor(PDGF)-AA & -BB,acidic & basic fibroblast growth factor(a&bFGF),transforminggrowth factors(TGF)-β1 & β2,dimethyl sulfoxide,retinoic acidをそれぞれ培地に添加したところ,dbcAMP,forskolin,retinoic acidにより増殖の抑制を認めた. 2.培養成熟マウス・シュワン細胞に対するPDGF,FGF,TGF-βの増殖作用およびforskolinの効果について検討したところ,PDGF-BB,bFGF,TGF-β1,β2が増殖促進効果を有し,forskolinはそれら増殖効果を抑制した.また,TGF-β1,β2の効果発現には,bFGF,あるいはbFGFとは異なる牛胎児血清(FCS)のheparin結合蛋白の共存が必要であった。このheparin結合蛋白の分離・精製を現在検討中である。 3.初代成熟マウス・シュワン細胞を10%FCSにて長期培養し,不死化シュワン細胞株を得た.これまで3株を樹立し,いずれも蛍光抗体法でS-100,laminin,CNPase,Po陽性であった.また,1細胞株の培養上清に初代シュワン細胞に対する増殖効果を認めており,同株が既知あるいは未知の液性増殖因子を産生・分泌していると考えられ,検索中である. 4.髄鞘障害マウスの1例であるSphingomyelinosis(spm)マウスから不死化シュワン細胞株を樹立した.同細胞株は電顕下でspmマウスに特徴的な胞体内蓄積物を有し,spmマウスの神経病変を追究する上で有用と考えられた.同細胞株の脂質代謝異常につき,現在検索を行なっている.
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