研究概要 |
ネパール産生薬Bayubidangaは,ヤブコウジ科に属するEmbelia ribesの果実で古来条虫駆除薬として知られているが,最近鞭虫や鉤虫にも有効であると報告されているので,その有効成分を明らかにする目的で本研究を行った. E.ribesをエーテルで抽出すると,有効成分として既知のembelinが得られた.一方,熱水で抽出すると別の有効成分としてgallic acidが得られ,embelinが熱水処理によって分解することが示唆された.これら有効成分の活性は,イヌ鞭虫(Trichuris vulpis)に対して,in vitroで,それぞれ0.01mg/ml及び0.5-1mg/mlであった. さらに,embelinの沸騰水及びメタノール(有機溶媒)中での分解の様相を明らかとし,熱水との接触によってdimer(二量体)に,メタノール処理ではO-methylembelinに変化することを証明した. 次いで,embelin及びその誘導体のin vivoの活性をネズミ鞭虫(T.muris)を感染させたマウスを用いて試験した.Hydrocortisone acetate前処理によって感染を成立させたBALB/cマウスに対しては,試験したE.ribes煎剤,embelin,その誘導体のうちpotassium embelateのみが,既知の抗鞭虫薬mebendazoleに匹敵するかなりな効果(治癒率70-100%)を示したが,他は無効であった.一方,predonisolone butylacetate前処理によって感染を成立させたマウス(BALB/c,ICR共)に対しては,potassium embelateもmabendazoleも無効であり,感染の方法が後投与の薬物の効果に大きく影響を与えることが示唆された.これに反して,ivermectinは全てのマウスに有効であった.
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