研究概要 |
リーシュマニア原虫株の分類同定法として単クローン抗体、アイソエンザイムおよびキネトプラスト(k)DNAによる手法を組み合わせて用い、総合的に検討を加え、同定法の標準化を計かるとともに、より正確な種の分類を試みた。用いた原虫株は、エクアドル国で分離された40株(ヒトの皮膚潰瘍病変から33株、保虫動物から6株およびサシチョウバエから1株)とWHOリファレンス株を用いた。原虫は、シュナイダー培地にてプロマスティゴート型虫体を培養して用いた。kDNA分析はミトコンドリアが多く含まれるキネトプラストから、ネットワークDNAを抽出し制限酵素(Mspl,Rsal,Hinfl,Alul,Mbol,Taql)で切断し4.5%〜10%のポリアクリルアミドグラディエントゲルにて電気泳動を行ない、エチジウムブロマイドもしくは、硝酸銀にて染色し、制限酵素切断パターンを調べた。また、単クローン抗体およびアイソエンザイムの電気泳動パターンについても検索を試みた。その結果、アイソエンザイム、単クローン抗体およびkDNAの分析結果は、非常に相関の高いものであった。現在、リーシュマニアの種の同定は、基本的にはアイソエンザイムを用いているが、単クローン抗体やkDNA単独でも十分同定できるだけの信頼性があるものと考えられる。さらにこれらの方法は、アイソエンザイムで区別できなかった差まで観察することができ、新種の記載などには、重要な役割をはたすものである。これらの結果からエクアドル国のリーシュマニア原虫株はヒトから、Leishmania panamensis,L.mexicana,L.major-like,L.braziliensis、野生動物からL.amazonensis,L.mexicana、新種のL.equatorensis、サシチョウバエからL.mexicanaが分離株として同定された。これらの株は、ヒトの皮膚潰瘍における病型や、地理的分布との関連性が強く、興味ある所見であった。
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