研究概要 |
Trypanosoma b.gambienseの変異表面抗原(VSG)が変異する契機を探るため,変異の頻度を的確に評価する方法をRT-PCRにもとめた。最も発現されやすいVSG KuTat1.1,1.2,1.3のどれかのクローン内に,他のVSGの発現が始まったことを検知するために各VSG遺伝子をクローニングし,その塩基配列を決めようとした。KuTat1.1については,1.5kbのうち5'側347個の塩基配列を決めることができた。KuTat1.2についてもクローニングしているが,トリパノソーマのコドンの使用が独自的で変わっているためか,読み枠をずらしてどの読み枠にしても終止コドンが現れ,塩基配列が決められないでいる。KuTat1.2やKuTat1.3遺伝子のクローニングについてはミニエクソン部のプライマーとVSGに共通な3'側の配列をプライマーとして,RT-PCRによるクローニングも試みている。 トリパノソーマのmRNAに特徴的な5'側の配列であるミニエクソン部の配列18塩基を5'側プライマーとし,決定されたKuTat1.1の配列18塩基から3'側のプライマーをつくり,RT-PCRを試みてみた。これらのプライマーはKuTat1.1に特異的であるはずだが,量的に少ないながらもKuTat1.2クローンにおいてもPCR産物が生じた。PCRの条件を変えて試みたが,その産物を与える原虫の最小限界数の比は1:1000であった。10^<-4>以下という極めて少数含まれるヘテロなVSGを発現しているトリパノソーマ原虫を増幅して検出することが所期の目的である。血清学的には交差反応はないが,データベースによる検索では,塩基配列上,各VSG間のホモロジーが予想以上に高いので,RT-PCRにより変異を検出する方法を再考中であり,トリパノソーマ原虫における,蛋白質の燐酸化のパターンを解析するなど,直接シグナル伝達の機構について検討することも進めている。
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