研究概要 |
感染症,とくにグラム陰性菌感染症においてはエンドトキシン(LPS)が,内毒素血症やエンドトキシンショック,さらに播種性血管内血液凝固(DIC)など凝固障害の発現に大きく関与している。これらの発症を抑制するためには抗生剤投与などに加え,LPSを直接無毒化ないし中和することが最も重要と考える。我々は,ウサギ顆粒球からLPSと結合しこの活性を中和する新しい18kDa蛋白(CAP-18)を精製し,cDNAクローニングによって全一次構造を決定した。この蛋白のC-末端37個のアミノ酸からなる7kDaのペプチド(CAP-7)は,グラム陰性菌およびグラム陽性菌に対して抗菌活性を示した。また、in vitroでのLPS刺激によるマクロファージからの組織因子,一酸化窒素(Nitric Oxidel)およびTumor necrosis factor(TNF)の産生を抑制した。さらに、in vivoでのLPSの致死作用をもブロックした。このペプチドの一次構造上の特徴として、ヘパリン結合ドメインを持っており、これがLPSとの結合、その中和および抗菌活性発現に重要であることを見いだした。この合成ペプチドは抗凝固活性をも有しており、抗凝固はX因子の活性化およびプロスロンビンからスロンビンへの活性化に対する阻害作用によることが明かとなった。ウサギ由来のCAP-18の一次構造に基づきヒト顆粒球からCAP-18とホモロジーの高いcDNAを単離することに成功した。ウサギのペプチドと同様、ヒトでもC末端32残基がLPS結合ドメインであった。しかし、抗菌活性はウサギのペプチドの1/5-1/10程度と弱かった。ヒトのペプチドには完全な形のヘパリン結合ドメインが欠けており、一部のアミノ酸をウサギのペプチドの配列と置換したキメラペプチドは抗菌活性、LPS中和活性さらに抗凝固活性がより高くなった。従って、この実験からも、種々の活性発現におけるヘパリン結合ドメインの重要性が支持された。これらのペプチドについて2次あるいは3次構造の比較から、ヒト由来のものをもとに、より活性の高いものを合成しこれの臨床応用を目指している。
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