研究概要 |
ブドウ球菌外毒素toxic shock syndrome taxin-1(TSST-1),staphylococcal enterotoxin群A‐E(SEA〜SEE),レンサ球菌発熱性外毒素streptococcal pyrogenic exotoxin群A-C(Spe-A〜C)はヒトやマウス主要組織適合複合体(MHC)クラスII分子に結合して抗原レセプター(Tcell receptor,TCR)の特定のvβ鎖を表現するT細胞を活性化する(スーパー抗原活性)。さらにこれらは急性全身感染症トキシックショック症候群(TSS)(TSS-1.SEA〜SEE,SPE-A-SPE-C)、猩紅熱(SPE-A〜SPE-C)の原因外毒素である。上記のT細胞活性化がこれらの疾患の異常反応の成立に大きな係わりをもつと思われる。さらに我が国で問題となっている川崎病とエルシニア感染症は本研究テーマの外毒素と近縁の外毒素によって惹起されると考えられる。我々は上記の細菌外毒素のT細胞活性化の機序をさらに解析することによって、これらの疾患の成り立ちの解明と、治療法や予防法の確立に寄与すべく研究を進めた。 結果 (1) ヒト血管内皮細胞のMHCクラスII発現とSEA〜SEE結合性とT細胞活性化:ヒト血管内皮細胞はγ-IFN刺激によりHLAクラスIIの表現とSEA結合性を獲得する。さらにSEA〜SEEによるT細胞活性化に強いA細胞活性を示した。 (2)SPE-A〜SPE-BのヒトHLAクラス2分子結合性:SPE-AとSPE-BはDQ分子に最も強い結合親和性を示し、DRはその次の親和性を、DP分子はかなり低親和性であった。 (3)Yersinia pseudotuberculosis由来スーパー抗原活性をもつ新しい外毒素の分離:千葉県酒々井町で集団発生したエルシニア感染症で分離されたY.ptbc菌から分子量21KDaのヒトT細胞活性化能を示す外毒素を分離した(Y.ptbc-derived mitogenic exotoxin,YPME)。YPMEはMHCクラスII分子に結合して、Vβ3,Vβ9,Vβ13.1,Vβ13.2陽性ヒトT細胞を選択的に活性化した。エルシニア感染症ではこのYPMEが発症因子として作用していると我々は考えている。
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