研究概要 |
ロタウイルスによる急性胃腸炎の発症機構に関しては、ウイルスによる腸管上皮細胞の変性効果によるものなのか、ロタウイルス特定遺伝子産物による腸管細胞のイオン輸送機能の異常によるものなのかは不明である。腸管上皮細胞の破壊による下痢であるならば赤痢でみられるような粘質性便が考えられるが、ロタウイルスによる下痢症はコレラに似た激しいミルク様水溶性下痢をともなう。コレラの発症機構はコレラ毒素による腸管細胞の分泌機能に重要なイオン輸送機能の変化によることが分子レベルで解明されている。ロタウイルスによる下痢症の分子機構として、コレラ毒素等と同様に腸管のイオン輸送等の分泌機能の異常による現象である可能性を検討するため、分泌機能に重要なcAMP,cGMP,caイオン等の細胞内メディエイターやそれらによって活性化されるprotein kinase活性の動態を感染細胞を用いて調べるアツセイ系を確立し、現在、種々の条件下で検討中である。又特定のウイルス遺伝子産物にコレラ毒素様の生理活性があるかどうかを調べるため、ロタウイルスRNAによりcDNAを作製し、これらを挿入した哺乳動物発現ベクターおよび、バキュロウイルスベクターを作製中である。発現ベクターができれば、細胞にトランスフェクトし、感染細胞を用いた時と同様にcAMP,cGMP、Caイオン,proteinkinase活性の動態を調べる。バキュロウイルスベクターができれば,昆虫細胞でウイルス蛋白を発現させ、精製し、その生理活性を細菌毒素のアツセイ系を用いて調べる。
|