研究概要 |
1.SCID-huマウスとIL-6遺伝子導入ヒト癌細胞を用いたヒト・生体内キラーT細胞分化機構の解析:レトロウイルス・ベクターpM5Gneoを用いてIL-6cDNAをヒト肺癌細胞,B腫瘍CESS,T腫瘍に導入した。まずアロの系にあたるヒトPBLをSCIDにi・p投与しSCID-huを作製し,これにIL-6遺伝子導入CESSをi・p投与した。その結果,生体内の胛・リンパ節・腹腔滲出細胞内にCESSに対するアロ抗原特異的なヒト・キラー細胞が誘導された。 2.さらに,肺癌患者PBLをi・p投与したSCID-huにIL-6遺伝子導入ヒト肺癌細胞(自己癌)を投与すると肺癌に対するヒト・キラー細胞が誘導された。一方,IL-6遺伝子を導入しない元のヒト癌細胞を投与したSCID-huではキラーTの分化は認められなかった。したがってこの系は今まで不明であった生体内におけるヒト・キラーT細胞の分化を解析する新しいモデルとして有用であることが示された。又,IL-6はヒト生体内キラーT分化に必要であることを示した。 3.IL-6transgenic SCID-huの確立と,これを用いたヒト・キラー細胞の分化過程の解析;IL-6cDNAを導入したC57BL/6マウスとSCIDを交配して確立し,これにPBLを投与しIL-6transgenic SCID-huを作製した。これにIL-6遺伝子を導入しないCESSや肺癌細胞を投与すると,通常のSCID-huでは誘導されない著明なキラー細胞が分化しえた。 4.さらに,C57BL/6 IL-6transgenicマウスに低免疫原性腫瘍を免疫しても極めて強力な腫瘍特異的CD4^-,8^+,Thy1.2^+キラーT細胞が誘導された。これらの結果よりIL-6はT細胞分化に極めて重要な分子であることが示唆された。
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