研究概要 |
自己と非自己の識別可能なT細胞レパートリーが形成されるためには,胸腺内でのCD4^+8^+細胞の段階で,ネガティブおよびポジティブ選択を受ける必要がある。この選択機構解明手段の一つとして,CD4^+8^+細胞を不死化させ,選択現象をin vitroで再現できる系の確立をはかるとともに,その実験系を用いて,以下のような成果を得た。(1)Radiation leukemia virusで不死化されたBALB/Cマウス由来CD4^+8^+リンホーマは,V_β6あるいはV_β6とV_β8を同時に発現しており,抗CD3抗体,抗レセプター抗体,Ca^<2+>イオノホア,コーチゾン,cAMPなどで,DNA断片化を伴うアポトーシスが誘導される。(2)V_β8陽性のリンホーマはブドウ球菌のエンテロトキシンB(SEB)と抗原提示細胞の存在下で増殖抑制と細胞死が観察された。抗原提示細胞としてクラスII抗原陽性であるB細胞,樹状細胞,上皮細胞とも有効であった。また,クラスII抗原としてはI-Eを主に使用しており,さらに細胞死の誘導は抗CD4抗体によって抑制された。(3)細胞死を免れた細胞は,抗CD3抗体あるいはSEBの存在下で次第にCD4^+8(]CP-[)細胞へと変化していく。このとき,未熟細胞の表面マーカーであるHSA抗原の発現は減少し,逆に,H-2抗原の発現は増加した。さらに,このようなCD4^+8^-細胞はホルボールエステルとCa^<2+>イオノホアの刺激でIL-2/IL-4を産生できる能力を獲得していた。(4)サイクロスポリンAでアポトーシスの誘導は抑制されるが,CD4^+8^-への移行は抑制されない。しかし,IL-2/IL-4産生能の獲得は抑制されていた。抗原レセプターを介したシグナルで細胞死をはじめとしたさまざまな変化がもたらされるが,これらの変化が,異なったシグナル経路を使用している可能性が示唆された。
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