研究概要 |
テトラクロロエチレン(以下テトラ)による地下水汚染地域を対象に次の研究を行った。 (1)汚染を地表から推定するための土壌ガス分析の有用性を検討した。 (2)検討した分析法を実地に応用して平面的汚染分布図を作成し,その分布に影響する因子を推定した。 (3)特定地点でボーリングを行い,汚染の鉛直分布をみた。 (4)汚染地域住民のテトラ暴露の程度を測定した。 各結果を以下に要約する。 1)土壌ガス分析にはコレクター法(当教室開発のフィンガープリント簡便法),土壌直接分析法及び土壌内空気分析法の3種を検討し,10カ所の汚染井戸周辺からそれぞれ複数の試料を採取分析した結果,それぞれ井戸水中濃度と有意相関を示し,いづれも有用性が認められた。なお各試料の測定にはヘッドスペースガスクロマトグラフ法が極めて有効であった。 2)コレクター法により,汚染源下流300mにわたって10m格子,130地点測定により汚染分布図を作成した結果,テトラは処々狭い範囲でスポット的に滞留しており,この分布は水田用揚水ポンプの稼働の影響を受けていることが分かった。 3)この平面分布図から特定地点を選定し,10.5mまでのボーリングを行い,50cmごとのコアを分析して汚染の鉛直分布をみた。分布は地層の粒度分布及び近辺の揚水ポンプ稼働と関連していることが分かった。 4)汚染地域の農夫の尿中三塩化酢酸を測定した結果,異常テトラ暴露の形跡は認められなかった。 以上の結果はテトラによる地下水汚染対策を進めるための事前調査に対して一つのモデルを示し得たものである。
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