研究概要 |
[乳仔移行] β-BHC、PCB,コプラナPCBを各々妊娠マウスに、妊娠10日目より経口投与し、それぞれの化合物の母体蓄積、母体から乳仔への移行について検討した。 β-BHC: 出産直前の母体には、全投与量の40%、胎仔には2%の蓄積が認められた。出産後1週間では、全投与量の約40%が母乳を介して乳仔に移行した。これは、母体に蓄積したβ-BHCの大部分が乳仔に移行するということである。PCB,コプラナPCB: 出産直前の母体には、全投与量の30%、胎仔には0.2%の蓄積が認められた。出産後1週間では、全投与量の約15%が母乳を介して乳仔に移行した。これは母体に蓄積したPCB量の1/2量に相当する。 ヒト体内(母乳中)に見られる平均的PCDDs/PCDFs組成を実験室で再構築した。このPCDDs/PCDFs混合物を妊娠マウスに経口投与し、生まれた乳幼仔マウス(胎仔期・乳仔期暴露)の免疫応答に及ぼす影響を検討した。 母親(マウス)体内に蓄積したPCDDs/PCDFsを母乳を介して乳幼仔が摂取すると、仔のlgM抗体産生に関わるB細胞の機能に影響はみられないが、lgG抗体産生に関わるB細胞、T細胞の機能は抑制され、その程度はT細胞の方が大きかった。さらに接触性アレルギー反応に関わるT細胞の機能も軽度に抑制された。 乳幼仔マウス(胎仔期・乳仔期暴露)lgG抗体産生に関わるT細胞の機能抑制を指標としてPCDDs/PCDFsの影響を算出すると、乳幼仔の無作用量は推定約0.02μg/1匹になった。この値は成熟マウスの1/10量以下である。 lgG,lgM産生能を測定するために、高速液体クロマトグラフィーによるlgG,lgM同時分析法を確立した。すなわち、GPC(ゲル浸透クロマト)カラムによりlgGとlgMを分離させた後UV検出器で測定する。
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