研究概要 |
ミニサテライトプローブMZ1.3を用いて親子鑑定における血縁間係の指標となるバンドの共通率について検討を行った。鑑定例は21例,当事者及び関係人の総数は76名であった。まず疑問の父/子,母/子,疑問の父/母について共通率を求めた。母子間すなわち血縁者間では50〜80%台の範囲に存在し、平均は60.4%であった。一方疑問の父/母すなわち非血縁者間では20〜40%台の範囲にあり、平均33.0%であった。50%以上を血縁関係あり、40%以下を血縁関係なしとしたところ、両者の間には有意の差が認められた(P<0.01)。次に疑問の父/子の共通率では、従来の血液型で否定されなかった肯定例では60〜80%台の範囲に存在し、平均72.3%、否定例では20〜40%台の範囲にあり、平均33.2%であった。これらの値は全て、肯定例は血縁者、否定例は非血縁者の範囲に存在しており、MZ1.3を親子鑑定に適用するためのガイドラインとして、親子間の共通率は50%以上、非血縁者間は40%以下とすることに矛盾は認められなかった。死後認知請求事件の場合、死亡した男の嫡出子あるいは同胞と子の間は2親等又は3親等の関係となるため、共通率も若干低くなることが予想される。まず兄弟間の共通率は55〜70%台の範囲に存在し血縁者間の範囲と一致していた。半同胞(異母兄弟)関係では40%台の共通率も得られており、慎重に検討することが必要であると考えられた。さらに従来の血液型検査でESDに孤立否定が認められた事例、及び母子間にGPTQO遺伝子の存在が示唆された事例についてもシングルローカスHLADQα,D1S80型とともに適用したところ、共通率より父子関係は否定されることが確認され、また母子関係は否定されなかったことから、GPTQO遺伝子を母子が共有しているものと結論された。従って、MZ1.3は通常の親子鑑定のみでなく、このような事例の確認においても有用であることが示された。
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