研究概要 |
リウマトイド因子(RF)の産生機序を明らかにする目的で、以下の3点について検討した。まず、我々は一部のRFがヘルペス科ウイルスのFc結合蛋白の抗イディオタイプ抗体として産生されうるのではないか、との仮説を検討してきたが、本年度は、この仮説が成立するための必要条件である、慢性関節リウマチ(RA)患者血清および関節液中の抗ウイルスFc結合蛋白抗体の存在を、サイトメガロウイルス(CMV)を抗原として用いて検討し、RA患者に有意に高率にCMVのFc結合蛋白に対する抗体が存在することを明らかにした。次に、RA患者ではIgG結合糖鎖のガラクトース(Ga1)が有意に高率に欠損し、糖鎖末端にG1cNAcを発現したIgGが増加していることが知られているが、この現象とRF産生との関連性を検討する目的で、近年報告されたG1cNAc特異的レクチンであるPVLを用いた糖鎖異常の迅速かつ高感度の測定系を作製した。この方法を用い、多数の健常人およびRA患者血清をスクリーニングし、RA患者IgGに顕著なG1cNAc発現の増強を検出した。この現象はRAの活動性と相関を示し、RF陽性患者では陰性患者と比較してより顕著に認められたが、非活動性、RF陰性患者群でも健常人と比較すると有意な異常が認められた。また、RAの関節液IgGでは血清と比較して有意にG1cNAcを発現の亢進が認められた。血清IgGをサブクラス別に比較すると、IgG1,IgG2,IgG4にG1cNac発現が強く、IgG3では健常人との間に有意差が見られなかった。これらの結果から、RFが糖鎖異常を持つIgG3と優先的に反応し、処理している可能性を考え、さらに検討中である。さらに、現在RFに対する抗原の立体構造と類似した構造を有するペプチド(mimotope)をデザイン中である。この情報が得られれば、上記の2点に関してもさらに詳細な検討を加えうることが期待される。
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