研究概要 |
我々は先にRT-PCR法によりPAF受容体mRNAが糸球体のみならず,尿細管にも発現していることを示した.しかし,この方法は定量性を欠いていたため,生理学的,病態生理学的研究へのこの方法の応用は限られたものと考えられた.そこでまず我々は簡便でかつ信頼できる定量的なRT-PCR法を開発し,MRT-PCR法と名付けた.この方法を用い単離糸球体,尿細管でPAF受容体mRNA発現の解析を企画した.当初作成したいくつかのプライマーによる試みがうまくいかなかったが,現在,新しいプライマーによりMRT-PCR法をPAF受容体にも応用できるようになり,検討中である.同時にNorthern blot法を用い培養メサンギウム細胞におけるPAF受容体mRNA発現の調節の解析を行なった.培養メサンギウム細胞でPAF受容体mRNAはPAF自身により低下した.また,Tumor Necrosis Factor αにより低下した. PAF受容体cDNAの塩基配列より演繹されたアミノ酸配列の一部に相当するペプチドを合成し,これに対する単クローン抗体の作成を試みたが,特異的な抗体は得られなかった.本学生化学教室で作成した特異的単クローン抗体を用い,免疫組織化学の方法によりPAF受容体の腎内分布を検討した.その結果,PAF受容体は糸球体同様,尿細管にも多量に発現しており,これは先のRT-PCR法によるmRNA発現と一致した結果であった. 以上の結果より近位尿細管にPAF受容体が分布していることが示されたので,家兎の単離近位尿細管を用い微小還流の方法でPAFの細胞内クロライド濃度,およびpHに対する影響を検討したが,有意の結果は得られなかった.
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