研究概要 |
ICAM-1分子は、免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する接着分子である。ICAM-1は血管内皮細胞をはじめとするさまざまな細胞表面に発現されており、種々の免疫応答に重要な役割を果している。また、炎症時における病変部位への炎症細胞浸潤や、癌細胞転移への役割を示唆されている。このため、今回の研究において、ICAM-1発現を調節する因子の解明を試みた。 まず、ヒトT細胞白血病細胞株CCRF-CEM(以下CEMと略)の培養上清中に血管内皮細胞上のICAM-1発現を誘導する因子を発見し(以下CAM-RFと略)、その分離・精製と遺伝子クローニングを試みた。その結果、CAM-RFは血管内皮細胞上のICAM-1,VCAM-1,Eセレクチン発現を増強したが、IL-1,TNFα、IFNγとは異なる新たなサイトカインであることが判明した。さらに、CAM-RFは,CEM細胞と血管内皮細胞の接着を用量依存的に増強したことより、CEMの強い転移能の一部が自ら産生するCAM-RFによって担われている可能性が示唆された。 次にCEMよりmRNAを精製し、cDNAを合成した後、CD8クローニングベクターのBst XI位置に挿入することによりcDNAライブラリーを作成した。これを用いて大腸菌を形質転換し、これよりcDNA/CD8を回収、COS細胞にトランスフェクトし、その培養上清中のCAM-RF活性についてスクリーニングを行った。その結果、いくつかのpostive colonyが得られたため、現在、限界希釈法を用いることによりpositive cloneを得る努力をしている。これが得られれば、ただちに遺伝子クローニングにとりかかり、塩基配列の決定、既知の遺伝子との異同の検討などを行う予定である。
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