研究概要 |
1986年に初めて分離された新しいヘルペスウイルスであるヒトヘルペスウイルス6型(HHV‐6)感染と成人における病態との関連を明らかにするために以下のことを検討した。 1.HHV‐6分離株間におけるT細胞認識エピトープの差異:健常人末梢血リンパ球を不活化HHV-6抗原で刺激し、得られた芽球を限界希釈法によりクローニングし、100系統余りのHHV‐6特異的CD4陽性ヒトT細胞クローンを樹立した。これらのクローンの抗原特異性を、種々のヘルペスウイルスおよびHHV‐6分離株を用いて検討した結果、以下のことが明らかとなった。(1)突発性発疹患者から分離されたHHV‐6株(Z29,HST,SF)と免疫不全患者から分離されたU1102株との間には、それぞれ特異的T細胞エピトープが存在する。(2)HHV‐6とヒトサイトメガロウイルス間には共通なT細胞エピトープが存在する。(3)HHV‐6とHHV‐7との間には特異的および共通T細胞認識エピトープが存在する。 2.HHV‐6感染のT細胞に対する影響:CD4陽性T細胞に種々のHHV‐6株あるいはHHV‐7を感染させ、表面抗原の発現変化とリンフォカイン産生を検討した結果、以下のことが明らかとなった。(1)HHV‐6感染によりCD3の発見量低下を認めたが、CD4の発現にはほとんど変化を認めなかった。特に、免疫不全患者から分離されたHHV‐6においてCD3発現量低下は著明であった。他方、HHV‐7感染ではCD4の発現量低下が認められたが、CD3の発現に対する影響は僅かであった。(2)HHV‐6およびHHV7感染によりCD4陽性T細胞よりTNF‐α、IL‐6、GM‐CSFおよびIFN‐γの産生が惹起された。 以上の結果から、HHV‐6には少なくとも2種類のサブグループが存在し、それぞれのウイルス感染によって惹起される病態に差異があることが示唆された。また、最近発見されたHHV‐7はHHV‐6と抗原性に一部共通な部分が存在するが、明らかに異なるウイルスであることが明らかとなった。
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