研究概要 |
強皮症-多発性筋炎重複症候群に特異的に出現する抗Ku抗体の対応抗原であるDNA末端結合蛋白(Ku抗原;p70/p80)の生理活性を追及し,膠原病における病因的意義を検討するために,1)Ku抗原エピトープの遺伝子構造および遺伝子多型,2)Ku抗原が結合するDNAの構造,3)Ku抗原とDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)との関連,について解明することを目的とした。 1)Ku抗原のC末端抗原エピトープに相当するゲノムDNA領域 (p70のアミノ酸545-609,p80のアミノ酸696-732)の構造を,PCR-SSCP法によって検討した。膠原病患者の自己抗原エピトープ構造は健常人と差がなかったが,色素性乾皮症と健常人の各1例は他と異なるp70遺伝子構造を示した。またp70は少なくとも2種類の遺伝子にコードされると考えられ,Ku抗原を規定する遺伝子ファミリーの存在が示唆された。 2)抗ku抗体とHeLa細胞抽出物が形成した免疫複合体中のDNAをサブクローニングして,塩基配列を決定した。30個のDNAクローン(平均鎖長196bp)にはオクタマ-配列類似の配列[ATTT(G/T)(C/T)(A/T)T]が延べ37回,およびトランスフェリン受容体調節領域に見られる塩基配列[GAAGTNA(C/G)]が延べ18回認められた。このことは,Ku抗原がDNA末端のみならず,特定の塩基配列を認識して結合する可能性を示唆した。 3)^<35>Sメチニオン標識HeLa細胞を抗Ku抗体で免疫沈降すると,Ku蛋白に加え350kD蛋白を同時に沈降した。この蛋白はDNA-PK(p350)に対する家兎免疫血清で認識され,DNA-PKの触媒サブユニットp350自身であることが確認された。Ku蛋白とp350の結合にはDNAが必要で,0.5M Naclで可逆的に解離した。DNA-PKの酵素活性にはKu蛋白とDNAの存在が必須であった。以上の結果はKu抗原がp350とともにDNA-PKホロ酵素を形成し,Ku抗原はDNA-PKの活性化サブユニットとして働く可能性を示唆した。
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