平成4年度の研究テーマは、(1)毛細胆管収縮とミオシンのリン酸化定量(2)肝細胞アクチンの重合率、臨界濃度の測定 であった。研究結果を略述する。 (1):48時間培養肝細胞に膜透過性を与える至適濃度の検討を、種々のサポニン濃度とインキュベーション時間を用いて、肝細胞のトリパン・ブルー取り込み率とFITC-labelled Phalloidinの染色性で行なった。その結果、至適条件は、50μg/mlサポニンで10分間室温処理する事により得られた。この条件下で、細胞膜に透過性を与えた肝細胞に1mM CaCl_2、1mM ATPを添加すると、すべての肝細胞の毛細胆管が収縮した。そこで、ミオシンリン酸化と毛細胆管収縮の関係を、(^<32>P)ATPを用いて検討した。サポニン処理をした肝細胞に1mM CaCl_2と(^<32>P)ATPを含む1 mM ATPを投与した後、SDS-PAGEを行い、オートラジオグラフィーをイメージアナライザーシステムで解析した。CaCl_2とATP添加後の毛細胆管収縮に伴い20kDa myosin light chainがリン酸化され、カルモヂュリン阻害剤の同時投与により、毛細胆管の収縮とミオシンのリン酸化がいずれも阻止された。以上の結果より、毛細胆管の収縮はミオシンのリン酸化により毛細胆管周囲のアクチン線維がスライドするときに起こると考えられた。 (2):ラット肝細胞よりアクチンを分離、精製する研究は、アクチンの回収率、精製に改良すべき点があり、現在も検討中である。 (1)の実験が予定通り進み、(2)の実験は技術的問題が残ったため、(1)を更に進め、人肝生検材料への応用をめざして、肝組織をホモジナイズした系でのミオシンリン酸化の測定を行なっている。
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