肝細胞増殖因子(HGF)はin vitroで初代培養ラット肝細胞の増殖を促進させる。また、劇症肝炎患者の血清HGFレベルは、患者の病態と密接に関連して変動することから、HGFは生理的な肝再生因子であることが示唆される。本研究ではHGFの臨床応用を目的として、まずin vivoにおけるHGFの肝細胞増殖促進作用を実験的に検討した。血清HGFレベルをin vitroで最大活性を示す5ng/ml程度に上昇させるため、ラットに腹腔内や静脈投与など種々の投与方法を試みた。ラット経静脈的にレコンビナントHGFを一回投与した結果では、血中のHGFの半減期は数分と極めて短く、持続的に経静脈的に投与した場合のみ血清HGFレベルは数ng/mlに上昇した。Alzetの浸透圧ポンプを用いて、レコンビナントHGFを約1μg/時間、7日間にわたりラットに経静脈的に投与し、肝細胞増殖作用をプロモデオキシウリジン(BrdU)を用いた免疫組織化学的方法により検討した。抗BrdU抗体により染色される陽性細胞を数えて求めた肝組織のラベリングインデックス(LI)は、正常対照ラットでは0.2%であるのに対して、HGF投与ラットでは2.6%と上昇した。またHGF投与中の5日目に部分肝切除ラットのLIは3.3%であり、部分肝切除のみのLI1.8%よりも高値であった。これらの結果から、HGFはin vivoにおいても肝細胞の増殖を促進させることが明らかになった。
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