研究概要 |
肝臓の小葉構造を中心とした微細構造と機能分化に関する研究は行われているが,胆道系すなわち肝内・肝外胆管の生理機能に関する研究は少ない.ラットの肝臓を門脈よりcollagenaseで潅流し,その後総胆管と門脈より各々ICG,エオジンを注入してそれらの脈管系を標識した後,肝を摘出し,実体顕微鏡下に胆管を系統的に剥離分離するマイクロディセクション法を確立した.さらに胆管の分岐様式とその口径により胆管を部位別に採取し,各部位の構造を光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察するとともにその構成蛋白をcapillary tubeによるcontinuous gradient polyacrylamide microgel methodを用いて比較検討した. ラットの肝内胆管の分岐様式は各葉で全体的には太いものより細いものまで門脈に沿って木の枝のような分岐様式をとっていたが,肝門部では肝実質より出た細い胆管は直接太い肝門部の胆管に吻合していた.またラットの胆管では部位によりその構成蛋白に差異が認められ,太い胆管に高分子および低分子の蛋白のバンドが認められた. 肝内および肝外胆管の部位別の生理機能についての研究は少なく,また腎蔵で用いられたマイクロディセクション法を応用して胆管を系統的に取りだし部位別に検討したのは初めてである.部位により胆管の構成蛋白に差異があることは機能が異なることが示唆されたため,肝内胆管の生理機能を研究する上で,マイクロディセクション法による肝内胆管系の分取方法は有用であると考えられた.
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