研究概要 |
1 実験的肺線維症における肺組織のセリンプロテアーゼの変動一昨年度はin vitroでセリンプロテアーゼの肺線維芽細胞増殖促進作用を検索し,トリプシン,トロンビン,キモトリプシン,らは本細胞増殖促進作用を示すが,膵および好中球エラスターゼは増殖促進作用を示さないことを明らかにした。 本年度は,セリンプロテアーゼの肺における線維化への関与を検索するために,プレオマイシン(BLM)による実験的肺線維症動物の肺組織のセリンプロテアーゼ活性を測定した。体重150gの雄性ラットにBLMを1回経気道的に投与し,10-14日後に肺線維症が発生するモデル実験で,組織学的に肺に線維芽細胞の増殖が最も活発な投与後7日目に肺組織のプロテアーゼ活性を合成基質を用いて測定した。BLM投与ラットの肺組織では,トリプシン,トロンビンおよびプラスミン,の活性が明らかに上昇していたが,キモトリプシン,エラスターゼ,ウロキナーゼ,Factor X,らの活性の上昇はみられなかった。BLM投与による肺組織のプロテアーゼ活性の上昇率はプラスミン活性が約6倍,トリプシン活性が約2倍,トロンビン活性が約2倍であり,プラスミン活性の上昇率が最も著明であった。精製ヒトプラスミンは,in vitroでトロンビンやトリプシンと同程度の肺線維芽細胞増殖促進作用を示し,プラスミン基質とともにトリプシン基質も分解した。これらの成績からBLMによる肺線維症における線維化にはセリンプロテアーゼの中ではプラスミンが最も密接に関与している可能性が高いと推定される。 2 ヒトの肺線維症におけるセリンプロテアーゼの病態的意義を解明するために,気道-肺胞洗浄液のプロテアーゼを検索し,気道液にトリプシン様酵素を見出し,これを喀痰から単一にまで精製し,これまでに報告されていない酵素であることを明らかにした。また,気道系に特異的に存在するプロテアーゼ阻害物質の病態による変動を検索した。
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