研究概要 |
【方法】患者54例:サルコイドーシス25例(サ症)、特発性間質性肺炎15例、膠原病肺病変8例、過敏性肺臓炎3例、好酸球性肺炎3例、正常コントロール40例。肺病変の確定診断は気管支鏡下肺生検組織、BALにより行なった。NMR検体は静脈血10ml、比重分離にて10^6-10^7個のリンパ球を得た。PBS/D_2Oにて洗浄後、同液にて22μlの浮遊液とし1.8mmの試料管に封入した。90MHz高分解能NMR装置を用い、70゚パルス、繰り返し時間2秒、water signal suppression下にspinningしながら37℃で^1Hスペクトルを得た。スペクトルの解析はN(CH_3)_3,CH_2COO,(CH_2)_n,CH_3ピークにつきGAUSSIAN CURVE FITTINGにて高さと面積を求め、病変による変化が最も少ないCH_2COOピークとの比を正常コントロールと比較した。病変の臨床的な指標としての胸部X線像、臨床検査成績(CRP,ESR,CBC,ACE,LDH,sIL-2R)と対比した。また、リンパ球の表面マーカーをFACStarにて検討し、各ピークの変化との関係を検討した。 【結果】サ症、間質性肺病変を有する患者で有意なメチル領域[(CH_2)_n,CH_3]の増高があり、この変化は病勢の消長に一致して増減していた。サ症では(CH_2)_n、間質性肺炎ではCH_3のピークがより変化した。サ症の(CH_2)_nピークの増高は表面マーカーCD8^+細胞の減少、CD4/CD8比の増加と正の相関を示し、血清ACE値、sIL-2R値の変化と連動した。また、サ症のCH_3ピークの増高はCD4^+HLA-DR^+の活性化ヘルパーTリンパ球数の増加と正の相関を示した。間質性肺炎のCH_3ピークの増高はLDHと有意の相関を示し、表面マーカーのCD4^+CD45RA^+細胞と正の、CD16^+CD57^+のNK細胞、CD11b^+を発現したCD8^+細胞と負の相関を示した。いずれの所見も、NMRスペクトルにリンパ球の機能変化が反映されていることを示していた。リンパ球のNMRスペクトル測定は、他の細胞免疫機能検査法と比較して安価で容易に行える。本研究により、この方法が肺病変の病態を把握する検査法として有用であることが示された。
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