研究概要 |
Saccadeに先行する立ち上がり緩徐な陰性電位(presaccadic negative potential,PSN)は随意性の高いタスクで出現しやすく、後頭部を含む頭皮上の広い範囲で出現し、Czで最大振幅を示すことがこれまでに明かとなった。本研究では(1)右向きsaccadeと左向きsaccadeにおけるPSNの頭皮上分布、(2)OzでのPSNの起源、(3)imaginary movementでもPSNが出現するか否かを明らかにすることを目的に、平均加算法によって正常人の脳皮質電位を検討した。 その結果、(1)PSNは後頭部以外ではsaccadeの方向と反対側の頭皮上で同側の頭皮上よりも大きな振幅を示し、後頭部では逆に、saccadeの方向と同側の頭皮上で、反対側の頭皮上よりも大きい傾向にあった。(2)後頭部で見られたPSNは暗闇でのsaccadeでは見られず、視覚刺激に由来するもの思われた。PSNに視覚刺激が関与することは、補足運動野や前頭眼野以外の大脳皮質の神経活動もPSNの起源に関与することが示唆された。また、(3)手指のimaginary movementにより運動を想像するだけでも、実際の運動を随意的に行ったと同様な分布、振幅を持った準備電位が得られ、準備電位は実際の筋活動ではなく、運動を行おうとする準備状態、運動のプログラミングに関与していると考えられ、Roland(1980)がimaginary movementにより補足運動野、反対側の一次運動知覚野で脳血流が増加していることを示したのと同じ結果であった。 今後、眼球のimaginary movement、準備電位の急性麻痺時の変化と麻痺回復過程における経過に興味が持てる。
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