研究概要 |
脳虚血によって脳神経細胞に遅発的に壊死が生じてくる(Kirino T.Brain Res.1982,vol239,p57-69)。この遅発性神経細胞壊死を効果的に防ぐ手段の一つに脳内温度を僅かに低下させる事がMinamisawa H.らにより報告されて(Ann Ncurol.1990,vol28,p23-33)以来、虚血性脳神経細胞の壊死の過程において細胞死に関連する因子、特に脳内温度と関連する因子の追求を筆者らは行なってきた。その研究の結果、心停止を用いた完全脳虚血モデルにおいて、NMR(核磁気共鳴装置)により測定された脳皮質組織pHは高体温虚血では低体温虚血よりも統計学的に有意に速く低下を開始し、そして持続した。これは脳皮質組織での脳虚血により招来する組織酸性化が高脳温では強く、低脳音では減弱化されるという事が示されたわけである。筆者らはこの研究成果を平成5年日本神経学会、日本脳神経学会総会(招来講演)において報告をおこなった。更に筆者らは神経細胞内に存在するミトコンドリア内膜の酵素の一つであるピルビン酸脱水素酵素(PDH)について虚血と再灌流を用いたモデルにおいても検討を行ない虚血時間の延長はPDH活性に影響を及ぼし、脳代謝を反映すること示唆し、これを平成5年日本脳卒中学会総会において講演を行なった。PDH活性の検討は現在さらに研究を継続中である。また熱誘導蛋白(ヒートショックプロテイン;heat shock protein:HSP)について染色方法が確立し局所脳虚血モデルにおいて現在、研究を継続中である。また筆者は脳内温度と虚血性神経細胞障害について著書を刊行し[Ischemic brain damage:The influence of brain temperature,published by Lund University 1993,code number LUMED/(MEXB-1012),p1-52.]さらに平成3年12月にPhD.審査講演をスウェーデン王国ルンド大学においておこなった。以上が研究実績のがいようである。
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