研究概要 |
(1)ミトコンドリア脳筋症診断システムの確立 ミトコンドリア脳筋症の診断には組織化学的,生化学的,分子生物学的な総合判断が不可欠である。我々は以上の方法を用いて,研究年度内に慢性進行性外眼筋麻痺症侯群26例,メラス(MELAS),43例ミオクロヌスてんかん(MERRF)6例,計75例を新に診断した。さらに3243変異を伴う糖尿病患者など新な疾患をも見出した。 (2)メラス(3243:A→G変異)の多様性 メラス患者の約80%にtRNA^<Leu(UUR)>のA→G変異が存在し,10%に3271書のT→G変異が存在する。3243変異をもつ患者102例を分析したところ,典型的な卆中様症状以外に糖尿病,筋症状のみ,低身長のみ,拡張性心筋症など多彩な症状を呈することが明らかとなった。また変異したミトコンドリアDNAは、経過とともに増加するといわれているが,その比率が78%から25%に低下した例を経験した。そのメカニズムについて今後検討する予定である。 (3)メラス(3243)変異と血管病理 メラスの主症状は卆中様発作である。この発作症状の発現には血管の異常が関与していると推定される。我々は血管系の異常は全身に分布していると推定し,生検筋内の小動脈を検索したところ,約90%の生検筋に異常(平滑筋細胞内のミトコンドリアの増加)をみた。In situ hybridizationでは血管壁に変異ミトコンドリアが80-90%と増加していた。 (4)Leigh脳症とミトコンドリアDNA変異 本症は常染色体劣性遺伝をとるといわれていたが,23例の生検筋を検索したところ1名に8993にT→G変異を認めた。本例は母親も変異をもっていた。
|