研究概要 |
1.ウシおよびブタ大動脈由来の内皮細胞を使い,20dyn/cm^2のせん断応力を24時間負荷したとき,流れの方向性が細胞の形状と細胞骨格の成分であるF-アクチンフィラメントの形態に及ぼす効果を観察した.流れは一方向にのみ加えた場合(一方向流),30分および3分おきに対向的に切り替えた場合(対向流),30分おきに直交方向に切り替えた場合(直交流)とした.一方向流,対向流のいずれの場合も細胞は流れの向きに配向し形態も細長く伸長したが,その度合は一方向流を負荷した細胞のほうが顕著であった.直交流の場合,細胞の向きはランダムとなり,細胞の伸長の程度は対向流の場合とほぼ同程度であった.また,流れを負荷しない細胞ではF-アクチンフィラメントは主に細胞の周囲に存在していたが,流れを負荷するとストレスファイバーが多く観察されるようになった.ストレスファイバーの分布も一方向流では上流側に多く観察されるのに対して,対向流と直交流ではほぼ均一に分布しており,違いが見られた.これらの結果より,内皮細胞は流れの方向を感知し,その形態や機能を変化させている可能性があることが明らかとなった. 2.ブタ大動脈由来の内皮細胞を用いてせん断応力による透過性を検討したところ,せん断応力負荷によって透過性が亢進していることがわかった.そこで,細胞の物質透過性と密接に関連している細胞間の接着蛋白であるプラコグロビンを蛍光抗体法により染色し,細胞周辺部における分布および接合状態を観察した.その結果,無負荷の状態では接着蛋白はほぼ均一な間隔で密に存在していたが,せん断応力の負荷によって接着蛋白の分布間隔が疎になり,透過性が亢進していることが予想された.
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