研究概要 |
本態性高血圧症は遺伝因子と環境因子の相互作用から成立すると考えられ,近年,遺伝因子の解明に分子生物学的手法が適用されている。遺伝因子としての腎Na排池能,環境因子としての食塩摂取の両者にともに密接に関連すると考えられる物質の内因性ジギタリス様物質である。我々は体収量および血圧調節に関与すると想定されるジギタリス様物質(EDLF)の追求を試み,その指標としてヒト赤白球への^3H-ウアバイン結合阻止特性が適当であることを明らかにし,この検定法に基づきヒト尿中に極性の異なる2種類のEDLFが存在することを報告した。このうち極性の高いODC-1がより普通的に哺乳類体内に存在し、多くの点でウアバインに類似していることを発表した。1990年に至り、Hamiynらはヒト血〓由来EDLFかウアバインそのものあるいは極めて類似した物質であることを指摘し、ウアバイン様物質(OLC)と命名した。我々はこの背景のもとでウサギ・ウアバイン抗体によりRIA法を確立し,ウアバイン免疫特性によるOLCの学一性、Naバランス調節あるいは各種実験高血圧モデルとの関連,体内にウアバイン抗体を保有するラットでの急性および慢性の食塩負荷に対する反応,OLCの産生部位などを検討した。さらにOLCが本態性高血圧症患者腎の遺伝素因あるいは臓器合併症の予知因子として使用できるかについての長期的研究の開始のための予備的に臨床的検討も行った。その結果、ラット・ウシ・ヒト血泉中にはウアバインRIA法で測定されるOLCが確かに存在し体内でのNa貯留が顕著な場合にNa利尿因子として作用し得る。またヒト本態性高血圧を含む一部の高血圧特にその初期でOLCが上昇し血圧上昇をひきおこす可能性があるなどの成績が得られた。
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