研究概要 |
1.大脳辺縁系による循環調節(1)麻酔下ラットの海馬へのネオスチグミン投与は血圧を上昇させた.この変化はピレンゼピンの同時投与により抑制された.両側副腎摘出はこの昇圧反応に影響を与えなかった.以上より,海馬内M1サブタイプのムスカリン性コリン作動性神経刺激は心血管系への交感神経刺激により昇圧反応を引き起こすと考えられた.(2)扁桃核内へのビククリン(GABA作動性神経阻害剤投与)は血圧上昇を引き起こした.両側副腎摘出はこの昇圧反応に影響を与えなかった.ヘキサメソニウムの前投与は上記の反応を抑制した.以上より,扁桃核内のGABA作動性神経は交感神経系に抑制的な調節機能を介して循環調節機能を有すると考えられた. 2.中枢神経刺激による脱感作機構(1)無麻酔,無拘束ラットの第三脳室へのネオスチグミン投与は血圧を上昇させた.3回の反復刺激(4時間毎)に対する昇圧反応の程度に有意差はなかった.両側副腎摘出ラットでは反復刺激に対して昇圧反応の程度を徐々に減じた(脱感作現象).血中ノルエピネフリンは無処置,副腎摘出群とも3回の反復刺激に対して上昇の程度は等しかった.また,脱感作現象も認めなかった.以上より,反復する中枢性コリン作動性神経系刺激による昇圧反応は脱感作を獲得しないが,この機構には副腎髄質が何らかの役割を担っていることが明らかとなった.(2)血中エピネフリンは引き続く刺激に対して徐々に減衰した.血糖値の反応も脱感作を引き起こした.以上より,反復する中枢神経刺激の対して循環系と代謝系は異なった脱感作獲得機構を有するが,この解離は交感神経-副腎髄質系の反応の解離に対応していることが明らかとなった.
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